初のODAフェリー竣工 内海造船、サモア向け“Lady Samoa Ⅳ”【海事プレス-11/30】

■「海事プレスONLINE」2022年11月30日(水)に、内海造船についての記事が掲載されています。

 内海造船は10月29日、瀬戸田工場で建造したサモア独立国向けの貨客船兼自動車渡船“Lady Samoa Ⅳ”を引き渡した。日本の政府開発援助(ODA)による無償資金協力として日本国際協力システムが発注し、内海造船にとって初のODA案件となった。瀬戸田工場を10月8日に出港し、同月29日にサモア独立国現地で引き渡しを完了した。
 新造船はサモア国と米領サモアを結ぶ貨客船“Lady Naomi”の代替船で、年間約1万人の旅客と約1000トンの貨物輸送を担う。米領サモアとの航路に就航するため、USCG旅客船規則を適用し、非常時に備えて迅速な避難が行える船内構造の設計や、防火対策、電源喪失対策を実施。広い通路やクイックリリースドアに加えて、防火区画を区切る扉などに防火グレードの高い製品を採用し、防熱材もより広い範囲に施工したほか、非常用発電機、電源供給用バッテリー、ローカルバッテリー付非常灯、蓄光案内板といった何重もの設備を有しており、乗船者が安全に退船場所までたどり着けるように対策が考慮されている。副次効果として通常運航時もスムーズな船内移動が可能となっている。
 推進方式は2機2軸2舵を採用し、貨物搭載のためのデッキクレーンを船尾左舷に装備。車両層は1層で、車両搭載場所と貨物搭載場所は倉内のゲートドアで区切られている。水槽試験での検討を重ねた速力性能に優れた船型を採用したほか、離着岸が容易にできるよう船首部にバウスラスタを備えている。船体上部にはソーラーパネルを搭載し、発電した電力を旅客スペースに使用する。抗菌コーティングや空気清浄器の設置などウイルス対策も施している。
【主要目】全長約48.00m、BDd=12.00m×6.30m(3デッキ)/3.80m(2デッキ)×2.35m(満載喫水)/2.45m(構造喫水)、1200総トン、177重量トン(構造喫水)、貨物搭載場所225平方メートル、旅客定員280人、乗組員17人、主機関:ヤンマー6EY17W型ディーゼル機関×2基2軸(連続最大出力837kW×1450/293min-1×2)、航海速力約11.5ノット、船級:日本海事協会、船籍港:APIA、航路:サモア(アピア)/米領サモア(パゴパゴ)