LNG燃料フェリー2隻を整備 商船三井フェリー、内海造船建造で25年竣工【海事プレス-2/18】

■「海事プレスONLINE」2022年2月18日(金)に、内海造船についての記事が掲載されています。

最新鋭のLNG燃料フェリー(写真は内海造船作成の本船イメージ)

 商船三井と商船三井フェリーは17日、最新鋭のLNG燃料フェリー2隻を建造することを明らかにした。内海造船で建造し、2025年に竣工する予定。商船三井フェリーが運航する大洗/苫小牧航路の深夜便の運航船2隻とリプレースする計画だ。LNG燃料の活用や最新技術の搭載により、従来船と比べてCO2排出量を約35%抑える。商船三井グループでは既に、フェリーさんふらわあが日本初のLNG燃料フェリー2隻を三菱造船に発注しており、23年の就航に向けて建造中となっている。今回、新たに2隻のLNG燃料フェリーを投入することで、フェリー業界の環境対応をリードするとともに、荷主が求める低炭素物流のニーズに応えていく。

 商船三井グループは昨年6月に発表した「商船三井グループ環境ビジョン2.1」で、50年までにグループ全体でのネット・ゼロエミッション達成を掲げた。国内外でのLNG燃料供給体制の整備推進を通してLNG燃料の普及を進めるとともに、30年までにLNG燃料船を約90隻投入する計画だ。フェリー分野では、西日本のフェリー航路を運航するフェリーさんふらわあが大阪/別府航路で23年に国内初となるLNG燃料フェリー2隻を投入する方針だが、東日本エリアについてもLNG燃料フェリーを導入することとなった。
 新造フェリーの船名は今後決定する予定。船型は約1万5600総トン、全長199.4mとなり、現在深夜便を運航している従来船の“さんふらわあだいせつ”と“さんふらわあしれとこ”と比べて大型化する。トラック積載可能台数(13m換算)は20台増やし、155台に増強する。乗用車輸送能力は50台(従来船は62台)、旅客定員は157人(同154人)となる。主機は、従来船では中速エンジン2基としていたが、新造船では低速エンジン1基とする。
 同船は、LNG燃料と規制適合油の両方を活用できる。LNG燃料を使えば、従来の燃料油と比べてCO2を約25%、SOxは100%、NOxは約85%の排出削減効果が見込める。さらに、商船三井と商船三井テクノトレード、三井造船昭島研究所の3者で共同開発した「ISHIN船型」を採用。船首は丸みをおびた流線形で、船首・船側方向からの風圧を低減する形状とし、風の流れをスムーズにすることに加え、斜め向かい風から受ける揚力を推進力として利用する船型となる。
 また、内海造船と海上技術安全研究所が共同で特許を取得した省エネ装置「ステップ」も搭載。船首喫水上部に左右一組の小型構造物を取り付けることで、船首部の波を船体から剥離させ、速力の低下を抑え、結果として燃費を向上させることを可能にする。「ステップ」を装着した船は、燃費性能が実測値で約2%向上することが証明されており、運航コストの削減や環境貢献など多方面から高い評価を受けている。
 国内物流では現在、トラックドライバー不足や、荷主の環境意識の高まりからモーダルシフトの機運が高まっている。24年度からはドライバーの時間外労働規制が強化され、長距離でのトラック陸送が難しくなるとされる、いわゆる「2024年問題」も懸念されている。こうした中、商船三井フェリーは低環境負荷型のLNG燃料フェリーを投入することで、低炭素物流を志向する荷主のCO2排出削減ニーズに応えるだけでなく、トラック輸送能力も増強することで今後見込まれる需要拡大にも対応していく。客室は、従来の大部屋を廃止し、全て個室化することで、ドライバーが快適に過ごせる環境を整えた。
 旅客輸送の面では、LNG燃料はエンジンの振動と騒音も油焚きに比べて劇的に減少するため、静粛性が高くなる点がメリットとして期待される。全室を個室化することで、プライバシーの保護と快適な船旅を求めるニーズに応える。また旅客設備をワンフロアにまとめることで、乗下船を除き他の階への移動がなくシームレスな構造とした。
 LNG燃料の供給体制については就航予定の25年に向け、LNGサプライヤー候補や自治体、港湾管理者などと実現性を協議し、供給安定性や経済合理性も含め最適な方法を検討していく方針だ。苫小牧港では既に、苫小牧港管理組合と石油資源開発(JAPEX)が2019年から20年にかけてLNGバンカリング検討会を開催。長距離フェリーに適したLNGバンカリング方式について、トラック・ツー・シップかシップ・ツー・シップが望ましいとしつつ、「停泊時間との兼ね合いや燃料供給荷役オペレーションの負荷軽減を考慮すると、早期のシップ・ツー・シップ方式の導入も検討する必要がある」としていた。苫小牧港管理組合は来年度、新規事業としてトラック・ツー・シップによるLNGバンカリングのトライアルを行う予定としている。
 船員は自社船員を配乗させる予定。LNG燃料を取り扱うに当たり、必要な資格を専門の教育機関で順次取得していく方針だ。