■「海事プレスONLINE」2023年12月22日(金)に、三和ドックについての記事が掲載されています。
造船業の人材確保・育成が課題としてクローズアップされる中、三和ドックが従業員の定着率向上に向けたさまざまな取り組みを進めている。今年6月には若手従業員に交流・出会いの場を提供するパーティーを開催。また、コンサート会場として本社ビルの施設を提供するなど、2020年から継続して地元の音楽イベントに協賛も行っている。地元因島の島外出身者が従業員に占める割合が増える中、積極的に地域貢献を果たし、知名度向上を図ることで、「人口減少社会を見据えた長期的視野で従業員の安定的な確保に努めていく」(同社・寺西勇会長)方針だ。
三和ドックは内航船、近海船、外航船の修繕・改造を手掛けており、年間の修繕隻数は300隻を超える。2010年頃からドック拡張を含む設備投資や従業員の福利厚生の充実も目的の1つとして、本社ビルの新築などを進めてきた。ただ、立地する因島の人口減少を受け、島内だけでなく、島外出身者の従業員に占める割合が増え、現在は6割が島外出身、さらに日本人正社員240人のうち、120人が30歳以下となっている。このため、結婚などを機に従業員が離れるというリスクを慢性的に抱える状況となっている。
三和ドックでは、安定的な人員確保のために採用活動を強化しており、関西から九州の大学や高校などから新入社員を受け入れている。また、人材育成についても新人に技能を共同で教える日本初の研修センターとして1999年に設立された、因島技術センターでぎょう鉄(鋼板の曲げ加工)の研修を行うなど、技能伝承も積極的に進めている。ただ、「婚姻相手の希望から、島外の企業へ転職を希望する若手社員も多く、どうしても安定的な人員確保という点では難しい状況」(同)となっている。
こうした中、若手社員の長期定着率に問題意識を持った中堅社員からの提案で実現したのが、今年6月に初めて開催した「新しい出会い応援パーティー」。来年春にも2回目を実施予定で、今後も定期的な開催を視野に入れている。このほか、地元への貢献による知名度向上による長期的な人員確保も視野に取り組んでいる。そのひとつが、「しまなみ海道・秋の音楽休暇村」への協賛だ。同社では、2020年の初回からスポンサーを継続しており、毎年11月に本社ビルの展望カフェ「海路平安」を提供し、コンサートを開催。「音楽と造船所の景色という異空間・非日常を味わえた多くの来場者に感謝された」(同)イベントとなった。同イベントへの協賛については、コロナ禍で海外から音楽家を呼ぶことなどが難しくなり、イベントの維持が難しくなる中、音楽家が宿泊するために船員寮、独身寮などを宿舎として無償で提供したほか、本社ビルでコンサートを行うための照明や譜面台を整備するなど全面的にバックアップ。ヴァイオリン界の巨匠として知られるフランスのジェラール・プーレ氏が演奏に参加するなど、同イベントの継続と盛り上がりに貢献してきた。
三和ドックでは働き方改革に対応し、毎週日曜日を全休日にしている。ただ、寺西会長は「ホワイト企業になったからよしというわけではない。会社そのものが魅力的でないと人は定着しない」と話す。今後も安定的な人員確保を見据えてさまざまな取り組みを進めていく方針だ。