■「海事プレスONLINE」2023年6月12日(月)に、三和ドックについての記事が掲載されています。
三和ドックは9日、大阪大学、長崎総合科学大学と共同開発した新しい溶接施工法が、日本海事協会(NK)から溶接施工法承認を取得したと発表した。低変態温度(LTT)溶接材料を用いた新工法で、疲労強度が最大で4割以上向上することを確認しており、修繕工事での活用により亀裂再発防止などを期待する。
開発したのは、LTT溶接材料を用いた伸長ビード角回し溶接法。一般的に溶接部には、溶接金属の収縮により外側に引っ張られようとする力(引張残留応力)が発生するが、LTT材は逆に縮もうとする大きな力(圧縮残留応力)を発生させることができるため、強度向上につながることがある。この性質を利用し、疲労亀裂の発生が多い、角回し溶接部の疲労強度向上をめざして研究開発を行った。
開発には、アドバイザーとして日本郵船、神戸製鋼所、矢島材料強度研究所、志賀強度・接合研究所も参加した。
船舶に生じた疲労亀裂の再発を防止するためには、応力状態を把握した上で構造の変更や増厚を行う必要があるが、限られた修繕期間では抜本的な対策を採れないケースが多い。新工法を適用すれば、溶接を行うだけで疲労強度が大幅に向上するため、有効な再発防止策となることが期待される。
船舶の修繕現場での使用を念頭に、下向・横向・立向上進・上向の全溶接姿勢で適用できるLTT材を開発し、施工方法を確立した。試験により、下向・横向・立向上進の3姿勢では、目標とした従来比4倍以上の疲労寿命延伸を達成。上向姿勢は一部課題は残るものの、十分な寿命延伸が見込まれる結果を得た。靭性特性や耐腐食性にも問題がないことを確認した。
今後は承認された溶接施工法に従い、実船への試適用を進め、効果の検証を行う。また船舶修繕に限らず、新規溶接構造物などの疲労寿命向上にも貢献できる技術とし、他分野への応用も模索する。