新造フェリーが八苫航路に就航 川崎近海汽船、コロナ下でも「安心」強調【海事プレス-6/15】

「海事プレスONLINE」2021年6月15日(火)に、内海造船についての記事が掲載されています。

 川崎近海汽船が運航する新造フェリー“シルバーブリーズ”が16日から八戸/苫小牧航路に就航する。同船は内海造船瀬戸田工場で建造されたフェリーで、これまで同航路を運航していた“べにりあ”の代替船となる。トラック輸送能力を従来船と比べて増強したほか、冷凍車電源も50口(220V)に増やし、モーダルシフトなど物流需要の増加に応える。新造フェリー就航に当たって岡田悦明取締役フェリー部長は本紙の取材に対し、「コロナ禍で厳しい状況下にあるが、物流を滞らせてはならず、安全運航が最重要だ。今は安心して使えることが一番大切な時期だが、新造フェリーではドライバー室を完全個室化するなど、安心して使っていただける船に仕上がった」と述べた。

 “シルバーブリーズ”は約8900総トンで、全長144.13m、幅23.0m、航海速力約20.0ノット。津軽海峡フェリーと鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)の共有船となり、川崎近海汽船は津軽海峡フェリーから用船する。船籍港は八戸港。船体には“べにりあ”と同じく緑色を採用し、「緑と木のテイストを基調とした安らぐ船内」を演出する。車両積載能力はトラックが70台、乗用車が30台となり、“べにりあ”と比べてトラックが3台増、乗用車16台増となった。就航ダイヤは、八戸午後5時30分発・苫小牧翌日午前1時30分着、苫小牧午前5時発・八戸午後1時30分着となる。
 同ダイヤは、北関東や東北エリアで当日集荷した生鮮品や食品などを八戸から積む需要が多い。将来的な需要増加も見据え、冷凍車用電源を増強したほか、トラック・乗用車の輸送能力も増やした。足元の物流需要について岡田取締役は、「(コロナ禍により、)依然として衣類や外食産業向けの食品などは減っており、回復が待たれるが、eコマースなど個人向けの宅配貨物は相当増えている」と説明する。将来的なモーダルシフトの加速も見据え、ニーズに対応していく。
 ドライバーがゆっくり休息できる船内環境も整えた。ドライバー室は全室完全個室化し、新たにドライバーズサロンも設けた。これにより、川崎近海汽船が運航するフェリー全隻でドライバー室が個室化されることとなった。

 客室設備では、“べにりあ”になかった特等室を新たに設置。さらに、一等のペット同伴室を5室用意したほか、部屋から直結する形でドッグランスペースも設けた。新型コロナウイルスの感染拡大などを背景に個室ニーズがさらに高まる中、二等寝台室の完全個室化を進めた。岡田取締役は、「新型コロナウイルスの感染防止策は全船で行っているが、より密を避けるという観点では“シルバーブリーズ”は個室化を進めた。安心して乗船いただける」と強調した。
 本船の特徴については、1機1軸で、船型は球状船首と単胴型普通船尾を採用。推進性能と耐航性の向上を図った。また航海中の横揺れを軽減するため、船体中央部にフィンスタビライザを備えた。さらに、船首にバウスラスタ、船尾にスタンスラスタ2台と、低速時の最大舵角45度が可能なマリナー舵を1台装備するとともに、可変ピッチプロペラを装備することで操船性を向上させた。

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